大学時代の大恩師、美術研究者の浅野徹先生の訃報の知らせを受け、20年ほど前の思い出の数々を振り返っています。私は学生時代に美術史を専攻しており、研究者としても美術館学芸員としてもご活躍されていた先生から、多くの学びを受けました。先生のご指導の中で、今でも心に残り、人生の教訓として刻んでいる言葉があります。
「学びとは山登りのよう、ようやく山頂に登り着き、そこからの景色をみた時『あぁ、自分は何も知らなかった、知らないということを知らなかった』と知る、そのように感じられる、そこに学びがある」
どなたかの山登りの体験についての著書の一節を引用してのお話しで、当時必死に修士論文を書き上げてほっとしていた私は、自分の学びを省みる機会になりました。今でも、背筋の伸びた姿で研究室の椅子に座り、柔和な笑顔で「やあ」という先生の顔が忘れられません。先生、ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。