2025/04/13

頭だけで考えない

 「頭では理解できるが、実際にはできない」、誰しもが一度は経験することだと思います。実際に「できる」にするには実践、行動しかないことは偉人たちが証明していますが、なかなか真似ができないというのが正直なところではないでしょうか。

MMSTの稽古の中でも頻繁に、頭で考えることと「実践」のバランスの話が出ます。どちらかの比重がおかしいとうまくいかないという話で、頭で考えずにやみくもに頑張ってみても結果につながらないということを、稽古でも山ほどみています。

「頭だけ」で考えないこと、「実践」との両輪でトライアンドエラーを繰り返すことが「できる」への近道であると言われます。

自分を含めた現代人にとって頭で考える量もスピードも圧倒的に「実践・行動」よりも先に進むことが多いように思います。「実践・行動」の方を強くするんだ、くらいの意気込みでやるが両輪としてはちょうどよくなるのかもしれません。


2025/04/06

言葉が通じないからこそのインプット

 MMSTでは、現在、台湾、韓国、日本の3カ国による国際共同プロジェクト「 Othello ver 3.0」のリハーサルを福岡のアトリエでおこなっています。3カ国から各2名ずつ、計6名の俳優が、生活を含め空間を共有しています。本作では、俳優の母語となる言語のテキストをそれぞれ使用するため、3カ国の言語が飛び交います。相手が今どの台詞を話しているのか分からない状況の中で進行されますが、不思議なことに自分と同じ言語の俳優同士のやりとりでも、うまくいかない場合があります。むしろ、相手の言葉が分からない方が、集中力、インプット力が高くなっているようです。

 言葉の意味さえ分かればうまくコミュニケーションがとれるというのは幻想なのかもしれません。目に見えないが確かにある相手の呼吸や身体感覚にどれほど集中し、空間を意識しつづけられるのか、これこそが「交流」の作業なのではないでしょうか。

2025/03/31

トークプログラムを通じたコミュニティの場所

 MMSTでは、2023年3月から隔月開催でトークプログラムを実施しています。先日13回目を終えました。

2年がかりの長期にかかるイベント。当初は参加者が少ない回もありましたが、次第に固定したメンバー以外に、時には他県や海外からも参加もあり、一つのサロン的な場所がつくられているなと感じています。

終了後は、毎回必ず会場のアトリエ内で懇親会を開き、情報交換、交流を深めています。

毎回参加するメンバーの中には、「部活動のように、必ず参加しなければという気持ちになっている」という話も出るほどです。

繰り返されるイベントならではの特徴だろうと思います。

毎回決して堅苦しい話をしているわけではありませんが、一つの定期開催されるプログラムや共通のテーマを通じて、ゲストや参加者同士が他者を知り、情報交換をおこなう場があるということは、個人主義が強まるこの時代には重要なコミュニティであると思います。

2025/03/23

自分が決める

 何かを選択する時、強い意志で選び決定することもあれば、その時のタイミングや周囲との関係の中で決まってしまうこともあります。

思うように行かず、周囲のせいにしてしまいたくなる時もあるでしょう。

私が親しくしているある韓国俳優が、以前、某映画オーディションに選ばれ、良いチャンスを得ていましたが、その後、本人の意志とは関係なく様々な事情が重なり、最終的にその作品の出演を辞退することになりました。

しばらくその彼は落ち込んでいましたが、ほどなくして私にこう連絡してきました。

「それでも、最終的に辞退を決めたのは私自身です。それが正しかったと証明できるように頑張るつもりです。」

確かに、不本意なことがあったとして、それを受け入れるのも、受け入れないのも、結局は自分が決めていることだなと思いました。

何事にも自分が決めているということを今一度見直そうと思います。


2025/03/16

人のコップに水を注ぐ

 他人より自分をまず優先するという意味で使われる「自分ファースト」という言葉。

本来良い意味ではありませんが、最近では、「他人を幸せにするためには、まず自分が幸せにならなければならない」という肯定的な意味で捉えられることが増えていると聞きます。

個々人の気持ちは楽になりそうですが、実際に社会コミュニティを円滑にしているのかは疑問が残ります。

MMSTでは、集団や関係性についての考え方について、よく話題に上がるたとえ話として、「人のコップに水を注ぐ」という話があります。

これは、自分は他者のことを考えよう、自分のことは他者が考えてくれる、という趣旨の話です。確かに、自分で自分のコップに水を満たしている人に、他人は水を注ごうとは思いません。

「自分のことは誰かが考えてくれる」くらいに留め、自分は他への気遣いや配慮をする、このことが結果的には他者、ひいては社会との関係性を強くし、人間を強くしていくのだと思います。

2025/03/09

背骨の美学

 近年、福岡市周辺の小学校では、授業の号令で「腰骨を立てましょう」と言うそうです。児童たちは、腰から背筋を伸ばす姿勢をとることを促されます。私も小学生の頃は姿勢を正すように言われた記憶はありますが、より具体的な姿勢のあり方へと指示が変わっているようです。

MMSTの稽古でも、この数ヶ月「背骨の美学」の話がよく出ています。

中心や重心、腰周りを自覚的に捉えて、それらを意識的に使いながら、日常生活で立つこととは異なる、いわゆる舞台上における「立つ」を目指していくものです。

背骨を意識する、言い換えると「私はこうする」という意志を明確にすることであり、それを自己の美学として貫いていく訓練といえます。これは俳優訓練に限る話ではなく、舞台以外のどの分野の、どの仕事においても共通するものなのかもしれません。

「私の美学」をどれくらい明確に持ち、貫けるのか。私自身も稽古のたびに背筋が伸びる思いです。

2025/03/02

MMSTheaterの道のり

 MMSTでは、2ヶ月に1度「MMSTheater」と題したトークイベントを開催しています。

このプログラムは、歴史に名を残した演劇人を取り上げ、その仕事を振り返りながらこれからの演劇や創作のヒントを探っていこうというもので、2023年3月から全14回、2年がかりのトークイベントとしてスタートしました。開始時は長い道のりに感じていましたが、次回で13回目、ゴールも間近です。

このような連続企画では、とにかく継続、維持することが最も難しく、時には苦労も伴います。そのため個人の想いだけではとっくに挫折していたかもしれません。

そのような企画を「続けるコツ」は、自分以外の何かとの関係性を使うことだと聞きます。

登壇者、参加者の方々と共闘するかのような関係性の中で、現在のところ中断せずに進むことができているのは、その好例だと感じています。

こうした積み重ねが説得力に繋がると信じて、武道の教えにもある「継続こそ力なり」を体現できればと思います。

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