2024/06/16

拠点と創作環境

 MMSTでは、2007年から奈良県の天川村という山村にアトリエを構え、滞在して集中創作する場として活用しています。

 アトリエは村の中心部よりもさらに奥地にあり、周囲は豊かな自然に囲まれる分、それ以外何もないと言っても過言ではない場所にあります。最寄りバス停から徒歩1時間半、最寄りのコンビニにいたっては車で1時間。この日常空間と切り離された場所での創作は、多くの面で効果的な作用をもたらしています。利用時間や音問題を気にすることもなく、稽古ごとに様々なスタジオを転々とする必要もなく、腰を据えて集中できる環境は、自ずと作品のクオリティにも影響を与えます。
 私はアトリエでの創作現場を経験する度に、「拠点」となる場を持つことは、創作の基盤をより強くすることとパラレルだという考えを強めています。物理的に、簡単には逃げられないこの空間での集中創作が、まさに修行の地といわれる所以です。

2024/06/09

成り上がりの熱量

 何かを変えたり、動かしたりしようとする時、少なくともそこには大きなエネルギーを必要とします。

 効率化をもとめる現代社会の中では、そのエネルギーはコストとされることも少なくなく、 できるだけエネルギーをかけずに目標に辿り着くことの方が美徳のように語られることさえある時代です。    『成りあがり』(角川文庫/2004年)は、言わずと知れた日本のトップミュージシャン矢沢永吉が、貧しかった幼少期からミュージシャンとして成功していくまでの想いや経験談を赤裸々にまとめた自伝ですが、この道程には、「やってやるぜ」という尋常ではないエネルギーと行動力が一貫しており、時にはハッタリもまじえて、まさに「成り上がる」様が伺えます。    道なきところに道をつくること、彼に学ぶ「今にみてろよ」の熱量が試されるのであり、自戒も込め、この熱量と行動力こそが、巌も通すために求められる能力なのだと思います。

2024/06/02

「中心があるか」という問い

 MMSTでは、公演のあるなしに関わらず、週に3回の定例稽古をおこなっています。

 稽古内容は創作の基盤となる身体訓練で、所謂、筋肉強化や良い声が出る、ということのためのトレーニングではなく、集団としての共通の価値、言語を持つことに主眼が置かれています。  私はMMSTに所属して以降、訓練での演出家の発言をノートに書き留めてきました。 その中で頻出する文言の一つが「中心」です。これは、体の軸はもちろん共通の価値をぶれさせない精神的な軸のことも指します。  ここ最近の稽古では、特に、俳優が自覚的に「中心」を意識できるか?を問われています。この「中心はあるのか?」という問いは、訓練上だけでなく、私自身の日々の活動や態度にも問われているものとして鋭い矢のように刺さります。私は何を価値とするのか。  ノートを書き溜めて10年。現在16冊を数えます。 見返しても驚くほどに同じことしか書いていません。 演出家は中心が決まっています。

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