2025/05/11

仕方がない、を考える

 「仕方がない」という言葉は、日常会話でもよく使うと思います。特に、うまくいかない時、色んな理由を並べて「仕方がなかった」と言いたくなることはないでしょうか。私自身、何度となく「仕方がない」のお世話になってきましたシンプルに失敗の原因が何かを考え、どうすればよくなるのかを考えた方が未来的で健全なはずなのですが、気を抜くと「仕方がなかった」ということにして、うまくいかない状況や自分自身を擁護したくなります。しかし、それは自分を守っているようで、むしろ守れていない状況を自ら作りだしていることになります。「諦める」「逃げる」の言い訳にしかならず、そこで好転する機会を失うことになってしまうからです。

MMSTの稽古でも「仕方がない」は成長のスピードを遅らせるという話があります。うまくいかない時ほど、「なぜか?どうするべきか?」という未来的な問いを自分に向ける癖をつけようと思います。

2025/05/05

当たり前の基準

 先日、輝かしい戦績を持つ剣道強豪校が全国大会の連覇を逃し、選手たちが涙する映像を見ました。短いながらドキュメンタリー形式で構成されており、日々の過酷な練習や優勝常連校であるというプレッシャーの中で戦う部員たちの日常がまとめられていました。彼らの姿を見て「強さ」とは、当たり前の基準がどこに設定されているかということなのではないかと思いました。先輩たちが代々懸命に繋いできた実績から考えれば、彼らにとって勝つことは「当たり前」であり、その「当たり前」を維持するには日々のきつい練習にも耐える必要があります。そして、それ自体が「当たり前」であるという強固な「基準」があるように思いました。そして、日本一や世界一を目指すならば、さらにシビアな基準を持たなければならないということになります。映像の中で監督が生徒たちにかけた「基準を変えろ」という言葉を、自分の中にも持たなければと思いました。

2025/04/27

縁と継続

 先日、MMSTの台湾での国際共同制作プロジェクトが終わりました。2019年に当プロジェクトの話が持ち上がり、その後のいくつかの出会いの中で少しずつ形づくられ、気がつけば2つの劇場を横断するプロジェクトに発展していました。「縁」といえばそれまでですが、今回私は、何かを実現しようとした時に必要なものは継続性だと感じました。

MMSTの代表は事業が終わった際に出演者や関係者にいつも話すことがあります。

「真剣に続けていればまた出会うことがあるでしょう」

出会うことは偶発的なことであり、それを縁と呼び喜ぶのもいいと思いますが、その縁が次に繋がるかどうかは、継続する意志があるかどうかだと思います。実現の過程では、いい時ばかりではなく、実際には困難にぶち当たることの方が多いのではないでしょうか。それでもめげずに継続した先に、実現することはもちろん、次のご縁もまた生まれるのだと思います。

2025/04/22

説得力

 相手を納得させる能力といえば、特にビジネスでは必要なスキルとされ、そのスキルが高ければ高いほど重宝されるのが一般的です。

説得力というと、説明する力やコミュニケーション能力が高い人を想像しがちですが、実際にはその人の行動や成果にほとんど左右されていると言ってもいいと思います。

先日、某衣装デザイナーが、タイトなスケジュールの中、海外での公演に使用する衣装を作ってくれることになりました。

彼は創作現場に到着後、瞬く間に6人分の衣装を、しかもハイクオリティに仕上げました。

その現場にあつまっていたスタッフ陣は、彼とほとんど会話をするまでもなく、その仕事ぶりに感服し、一気に彼への信頼感を寄せているのが伺えました。

国境を超えても変わらないのだと感じた瞬間でした。

表面的な話術スキルでも事足りることはあるかもしれませんが、どのような現場においても、結果を残す説得力を意識したいと思います。

2025/04/13

頭だけで考えない

 「頭では理解できるが、実際にはできない」、誰しもが一度は経験することだと思います。実際に「できる」にするには実践、行動しかないことは偉人たちが証明していますが、なかなか真似ができないというのが正直なところではないでしょうか。

MMSTの稽古の中でも頻繁に、頭で考えることと「実践」のバランスの話が出ます。どちらかの比重がおかしいとうまくいかないという話で、頭で考えずにやみくもに頑張ってみても結果につながらないということを、稽古でも山ほどみています。

「頭だけ」で考えないこと、「実践」との両輪でトライアンドエラーを繰り返すことが「できる」への近道であると言われます。

自分を含めた現代人にとって頭で考える量もスピードも圧倒的に「実践・行動」よりも先に進むことが多いように思います。「実践・行動」の方を強くするんだ、くらいの意気込みでやるが両輪としてはちょうどよくなるのかもしれません。


2025/04/06

言葉が通じないからこそのインプット

 MMSTでは、現在、台湾、韓国、日本の3カ国による国際共同プロジェクト「 Othello ver 3.0」のリハーサルを福岡のアトリエでおこなっています。3カ国から各2名ずつ、計6名の俳優が、生活を含め空間を共有しています。本作では、俳優の母語となる言語のテキストをそれぞれ使用するため、3カ国の言語が飛び交います。相手が今どの台詞を話しているのか分からない状況の中で進行されますが、不思議なことに自分と同じ言語の俳優同士のやりとりでも、うまくいかない場合があります。むしろ、相手の言葉が分からない方が、集中力、インプット力が高くなっているようです。

 言葉の意味さえ分かればうまくコミュニケーションがとれるというのは幻想なのかもしれません。目に見えないが確かにある相手の呼吸や身体感覚にどれほど集中し、空間を意識しつづけられるのか、これこそが「交流」の作業なのではないでしょうか。

2025/03/31

トークプログラムを通じたコミュニティの場所

 MMSTでは、2023年3月から隔月開催でトークプログラムを実施しています。先日13回目を終えました。

2年がかりの長期にかかるイベント。当初は参加者が少ない回もありましたが、次第に固定したメンバー以外に、時には他県や海外からも参加もあり、一つのサロン的な場所がつくられているなと感じています。

終了後は、毎回必ず会場のアトリエ内で懇親会を開き、情報交換、交流を深めています。

毎回参加するメンバーの中には、「部活動のように、必ず参加しなければという気持ちになっている」という話も出るほどです。

繰り返されるイベントならではの特徴だろうと思います。

毎回決して堅苦しい話をしているわけではありませんが、一つの定期開催されるプログラムや共通のテーマを通じて、ゲストや参加者同士が他者を知り、情報交換をおこなう場があるということは、個人主義が強まるこの時代には重要なコミュニティであると思います。

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