MMSTの稽古では「限界ギリギリで闘う」という表現が頻繁に登場します。これは「余力を残さず、自分にとって超えられるかどうかの瀬戸際で挑戦すること」を意味します。私は、この限界への挑戦で必要とされるのは「強い精神」なのだと理解していましたが、稽古場で演出の言葉を注意深く聞いていると、単純に「必死に取り組むこと」とも少し違うのではないかと考えるようになりました。そもそも限界とは何かを考えたとき、私は「限界のライン」が何を指すかを正確にイメージできないことに気づきました。目標ラインがあやふやな状態のままでは、「ギリギリ」もなにもありません。何を越えようとしているのかが不明瞭では、たとえどんなに強い精神や前向きな気持ちがあろうとも空回りの状態が続くことに繋がります。「限界ギリギリ」のために重要なことは「精神」ではなく、自分にとっての具体的な目標ラインを明確にすることなのではないでしょうか。そのラインを越える挑戦をする中で「精神」が培われていくのだと思います。