公演の本番はもちろん、稽古においても、私は舞台上で集中する俳優に神秘性を感じる時があります。
「舞台に上がった俳優は日常とは違う感覚をもって時間と空間を生み出す」 私は当初この話を抽象的に考えていましたが、様々な現場に立ち会う中でかなり具体的なことだと理解するようになりました。 日常生活にはない呼吸感覚や身体感覚を鍛錬した俳優は、舞台に上がった時、確かにその時空、瞬間を生きている。生き直しているというと語弊がありますが、普段生活する中での体や意識とは別物として登場し、別次元の世界(空間)をつくり出します。 非日常を生きるために何が必要かを真剣に考え、もがいて、一歩舞台に上がればそこに生きる覚悟をもつ俳優が説得力を持つのは当然のことであり、見る者の価値観を揺さぶる可能性を広げることも頷けます。俳優が舞台に生きる意味はここにあるのだろうと思います。