文化芸術分野における助成金の申請時期になりました。MMSTでも毎年、各所に助成申請をおこなっています。私が初めて申請したのは約20年ほど前になりますが、当時は「活動するための資金が足りないので支援がほしい」という程度の心持ちだったと思います。「助成を受けること」について、そこまで深く考えてはおらず「単純にお金さえもらえれば良い」という子どものお小遣いのようなスタンスでしたので、今思い返せば一端の大人が恥ずかしい限りです。ある頃から「助成金によって何が可能になるのか」という問いを設ける助成元が増えたように感じます。この活動が社会に対してどのような影響を与えるのか、活動する側が当然考えていなければ、趣味の延長と言われても仕方がありませんので、真っ当な問いだろうと思います。経済的に赤字が少なく済むこと以外に何がもたらされるのでしょうか。以前採択された助成元の代表者が「私達は助成した芸術団体と共闘関係だと考える」とのスピーチをなさいました。私はそれを聞いて心強く思ったことを今でも覚えています。助成金とは「ここに必要な価値がある」と訴える旗印のような役割をするものだと私は考えてます。その旗がなければやれないというような軟弱な態度では勿論いけませんが、自分たちの活動が社会にどのような影響を与えるか、そして何故そのような影響がこの社会にとって必要なのかを旗を振って提示し、説得し共闘関係を広げていく仕組みなのだと思います。どのような活動にも資金は欠かせませんし、資金のバックアップを受けてできることが広がるのは事実です。しかし、資本主義社会の中で、ともすれば切り捨てられてしまいそうな芸術活動に、あえて資金を投入すること。そして、そのことによって資本の増幅だけではない価値観をしっかりと提示していくことが重要なのだと思います。助成金によって生まれるのは、お金の使用についての選択肢の多様化であり、それによって社会に生まれる新たな「利益」の創出なのではないでしょうか。少なくとも私はそのような社会に「豊かさ」を感じますし、そのような社会を実現する為に助成金を活用していきたいと思います。