MMSTキュレーターの古賀裕奈が、週に1度、日々の活動や社会との接点のなかで生まれた問いを思考のメモとして書き留めている場所です。 すぐに答えが出ることはありません。 それでも、考え続けることを手放さず生きたいと思います。
2026/02/10
演劇と政治
古代ギリシャにおいて、演劇は政治と深く結びついていたと言われています。神話をもとに政治的、社会的な考察を市民に促すなど、特に当時は市民(注:成人男性に限るが・・)へ向けた教養の場としても機能しており、現代のような娯楽としての要素は低かったことが知られています。日本でも、60年代の学生運動と演劇が深く結びついていたことを思えば、その批評性が社会を考える上での有効なメディア、ツールであったことが窺えます。しかし、その運動の帰結と、その流れに対しての反動もあってか、現代では批評性を伴う演劇が敬遠される傾向にあるともいえるのではないでしょうか。演劇関係者に権力に対して批判精神を持つ左派的な立場を取る人は少なくありませんが、現状の問題を本気で改善する際に、問題点に対しての鋭い指摘が本当に有効なのかどうかは落ち着いて考える必要があるように思います。演劇が、その特性を通じて社会を考え、実践的に世の中の問題や課題を解決しうる有効な道具であるならば、現状への批判に留まるのではなく、来るべき未来のモデルを具体的に提示し「考え、実践する」為の現実空間を作ることこそ本来の姿なのかもしれません。私たちが生きる今日の世界は、戦争をはじめ様々な問題が渦巻いています。今こそギリシャ悲劇を参照し、演劇を有効に活用した実践者として行動できる「市民」のふるまいを身につけたいと思います。