「度胸はあった方がいい」
私は度胸があることは良いことだと疑いもなく思っていました。たとえ困難な状況にあってもひるまずに対応できるなど、一般的に良いニュアンスとして使われることが多いためだと思います。ただ、深く考えてみれば、単純に度胸があるなしということではなく、どういう状況において「度胸があることが良いのか」を考えることが重要なのではないかと思うようになりました。ある演劇の現場で、自分のことだけでなく周囲がどうなっているのかを感受できる大きな視点を持たなければならないという話が持ち上がりました。「今ここに必要な人はどんな人か?」を考えて行動できる広い視野が問われるということです。度胸があるというのは、このように「ここでは落ち着いて行動する人物が必要とされている」、「困難な状況にあって堂々とする人がいることで周囲に安心感を与えられるかもしれない」という「必要性」に応えて振る舞えたかどうか、が重要なのではないでしょうか。「自分がどうしたい」や「他人にどうみられたか」と言った自己完結的で狭量な視野は「子ども」と言わざるを得ず、他者との関係における「必要」を感じ取り、時に度胸のある振る舞いをとれるのが「大人」なのだと思います。