以前、あるプロジェクトを進めている中で、関係者から進行状況について確認をされたことがあります。ただの確認であったにも関わらず、進行が少し遅れて余裕のなかった私は「責められている」ように感じ、言い訳めいたトンチンカンな回答をしてしまいました。当然相手からは、なぜそんな回答になるのかと不満を持たれ、途端に恥ずかしくなりました。咄嗟に言い訳をしてしまったのは何故だったのでしょう。どこかに「私は悪くない」と言いたい気持ちがあったのではないかと思います。「私は悪くない」という態度は、子どもにしばしば見られますが、それは「自分を守りたい」という心理からくるものだと考えていました。しかし、大人になって先のような例を考えてみると、そもそも自分を守っていることになるのか疑問が湧きます。私の言動によって少なくとも相手にはかえって不安や不満を与えており、自分を守るどころか自分の価値を咎める方向になってしまうのではないでしょうか。これは「守る」の範囲が関係するのではないかと私は考えています。例えば、上の世代の経営者から現役世代の我々に対して「覚悟が弱い」とよく指摘されます。この「覚悟」とは、単にこうするんだという独我的な自己欲求というよりは、どれくらい「周囲への影響を引き受けるか」ということなのではないでしょうか。「私(だけ)を守る」という小さな視点ではなく、「私(に関係するもの)を守る」という視点が重要であり、自らの行動や言葉が指す範囲を拡げていくことが「私は悪くない」という子どもの思考から抜け出す唯一の方法なのだと思います。