2025年 9月14日、2007年より当団体が運営してきた奈良県天川村の古民家アトリエ(通称MAL)での最後の公演を終えました。山深く大変不便な場所に佇む小さなアトリエに、国内のみならず海外からもたくさんの方がかけつけてくださいました。現地の村民でさえ「僻地」だという場所に人が溢れている光景を見ながら、私は「エネルギーをかけて何かをする」ということの力をあらためて考えさせられました。私たちは公演準備とともにアトリエ退去のための復旧工事や引っ越し作業を並行しておこなっていたのですが、システム化されている都市部と違い、ゴミ処分ひとつをとっても大変な困難に直面しました。しかし、この「不便さ」から生まれる人との交流もあったのです。相談すれば1時間かけてわざわざ立ち合いに来てくれるゴミ処理場の職員、こちらの状況を汲んで処分を引き受けてくれる民間業者、気にかけてくれるご近所さん、いずれも都市部の生活においてはコストとして省略されてしまうようなコミュニケーションかもしれません。しかし、不便だからこそ「協力して生きる」ことが当たり前となっているコミュニティでは、人と人を繋ぐ重要な役割として今なおこのようなコミュケーションが生きているのです。そのような現実を前に、気付くと自分の損得や効率化を考えてなるべく労力をかけずに済まそうとしてしまっている自分自身が恥しくなりました。現代では顔がみえるやりとりを面倒に感じる人が多い気がしますし、実際私もそう感じてしまうことはあります。しかしながら、エネルギーをかけて「人に会う」という「ふれあい」を失うことは、人間として何か大きなものを失ってしまうようにも感じるのです。私達のアトリエが最後に教えてくれた「人にふれる」ことの大切さを今後も忘れずにいきたいと思います。