2025/11/29

俳優という人間

演劇に欠かせない存在である俳優。俳優とは何を行う人を指すのでしょうか。

 俳優稽古の方法論は、劇団、個人によって様々だと思います。MMSTでも、日々身体訓練を実施し、身体的、精神的な技術を磨いています。私が演劇の世界に足を踏み入れた当初、稽古でよく耳にする「身体性」という言葉が腑におちませんでした。多くは「体を使う」という意味で使われているようでしたが、それだけではないニュアンスがあるように思われ、俳優にとっての「身体性」とは実際どういうことなのか、という疑問が拭えずにいました。

 MMSTで身体訓練を見るようになり、私は、演出家がいつも同じ言葉を繰り返していることに気づきました。「最速」「持続」「中心」、他にもいくつかありますが、これらの言葉は特に多用されています。最初は、俳優の動きを見ていてもこの言葉が意味するところが正直よくわかりませんでした。「速く動く」はまだしも、「持続」や「中心」といった目に見えないものについては、実際に把握できるものなのかどうか疑問でした。能でも歌舞伎でも、舞台上では、「日常とは異なる感覚が必要である」と言われます。これは、習慣化された日常の体とは違い、常に意識化、客観化された特殊な身体の状態を持続しなければならないということなのだと思います。10年以上MMSTでの稽古を見続けてきた今、この「持続」こそが最も難しく、そして俳優にとって必要不可欠なものだ、ということを実感しています。この自らの意識と身体とのギリギリの客観化の中に「身体性」というものの実態があるように私は考えています。俳優は機械ではありませんので、日々のコンディションに影響も受けますし、台詞や動作も加わる中、それら全てを客観的に把握し、「非日常」の空間を創りだすべく舞台上で対処しなければなりません。そして、それには、尋常ならざる集中力が必要となるのです。そのような「身体」を獲得するべく鍛錬を積み、思いもよらない空間を創り出そうとする人間が俳優であり、そこに未知の可能性をみようとするのが演劇人なのだと思います。

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