2026/06/07

耳をすませば 〜アンケートでは聞こえない観客の声〜

 MMSTの代表はアンケートを読まない。これは少なくとも私がMMSTに所属した当初から現在に至るまで代表の一貫した態度です。誤解されることも多いですが、これは決して観客を軽視しているわけではありません。特に舞台芸術のように、時間と空間を観客と共有する芸術において、紙一枚(あるいは現在はデジタルでのフォーム投稿のようなものも出てきていますが)で一方的に書いて終わりという関係性ではやっていないということだと理解しています。とはいえ、一スタッフ側の事情としては、観客層や公演した会場と集客状況の分析といったマーケティングの視点からの必要性であったり、もっといえば活動の指標として、より客観的な資料提示のためにアンケートを取りたいということはありますので、アンケートを取ること自体に意味がないということではありません。アンケートには、作品についての率直な感想が書かれている場合もあれば、関係者への労いをベースとしたもの、時には作品から離れて自身の過去の思い出話を書き連ねているものまであります。私自身の経験から考えても、自分の考えと発信した言葉が100%一致していることはほぼ無いように思いますので、その意味では声にならない「声」というものがあり、舞台芸術においてはそのような「声」への感度が重要なのではないかと思っています。

 たとえば公演会場で観客の様子を注意深く見れば、この観客はつまらなそうにしている、あの観客は集中して観ている、ということは見えてきますし、黙って作品を観ている観客から多くの見えない情報を受け取ることは可能だろうと思います。観客の要求に応えるのではなく、観客の「声」を聞くこと。そして、まずはそのような声を聞くために「耳をすます」ことが今最も必要なことなのかもしれません。舞台芸術が「今現在」という時間と空間を観客と共有し、目に見えない膨大な情報を感受し合っているという現実を忘れてはならないのではないでしょうか。

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