福岡市中央区平尾エリアにかつてFUCA(Fukuoka Urban Community of Art)というアートスペースがありました。倉庫を改装してつくられた2階建の施設で、2012年にスタートし、毎年公募で選ばれた4組のアーティストが1年限定でアトリエをシェアするというアーティストインレジデンスの活動と、1階にあるイベントスペースの運営を主におこなっていました。5年間という期限付きの活用ということで2017年には閉鎖されてしまいましたが、福岡で活動するアーティストには今でも記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。MMST代表はこのFUCAの第1期レジデントアーティストとして活動していました。私が初めてFUCAを訪れた際、中心部に近い都市部の中にひっそりとありながら、一歩中に足を踏み入れると強い個性を持った独特な空間が拡がっており、知らぬ間に魅了されてしまったことを覚えています。
代表がレジデンスアーティストとして活動していた縁もあり、その後も何度となくMMST主催の展示や公演で使用させていただいた思い出深い場所です。私自身も1年ほどFUCAの運営に携わらせていただいたことがありますが、アートを中心としながら、クリエーター、作家、音楽家のみならず、アートという垣根を超えて様々な出自の人々が集まる、まさに「Urban Community」な場所であったことが強く印象にあります。イベントスペースの隣に音楽スタジオを構えていたエノトンスタジオさん(現在は福岡市中央区赤坂に移転)は、カフェも運営しておりイベントスペースにて展示や公演を見たお客様が自然と立ち寄る空間になっていました。FUCAに行けば非日常的な感覚が味わえるかもしれない、普段出会わないような人に出会えるかもしれない、そんな期待を毎回持たせてもらえる場所でした。時には「何者だろう」というデタラメな人も含め、とにかく人々が集い多くの出会いが交わされ、一種の文化サロン的な位置付けになっていたように思います。必ずしも難しい話ばかりが行われていたわけではありませんが、芸術、文化、社会、それをとりまく様々な問題や課題意識がフランクに飛び交う場所で、FUCAを訪れ感銘を受けた人がその後自分の友人知人を連れてくることも多く、その輪が自然と広がっているようで、振り返ってもなかなか特殊な磁場を持った空間だったと思います。世界が混沌としている今こそ、このような場所が必要とされているのではないでしょうか。エンターテイメントを提供する場は無数にあり、勿論それ自体を否定するつもりもありませんが、共感性の拡大だけでは息苦しい社会になってしまうようにも思います。異なる文脈で生きる者同士が出会い、異なる者同士が力まずに語り合う場があることによって、人間が持つ「多様性」が活かされる社会が生まれるのではないでしょうか。MMSTでも今後そういう場をつくり出すべく実行していきたいと思います。