MMSTの稽古では頻繁に「今」ということが演出家から問われているのを目にします。この言葉を聞いた当初は、「今」が当然に存在するものだと思っていたため、演出家のいわんとすることがいまいちわからずにいました。この「今」の中でどうするかを考え対応することは意外にも難しいと感じています。私は小学生の頃から将来への不安を抱える方でした。小学生の段階ですでに大学受験で失敗したらどうしよう、就職ができなかったらどうしようと未来を先取りし、ネガディブな想像ばかりを膨らませ、自ら不安を増幅させていました。「失敗しないために前もって準備をした方がよい」という話があちこちから耳に入り、いつの間にかその教えが真理かのように染み付いていきました。しかしながら、蓋を開けてみれば、私は大学受験で第一志望校には落ちましたし、就職活動もスムーズにはいきませんでした。そして、毎回過去の自分の振る舞いを反省しては「過去にこうだったから」ということを理由にその時の行動を考える癖もついていました。常に「未来」か「過去」を参照に「今」を生きていたといえます。そんな中、とあるMMSTのミーティングの際に代表から「今、考えてみなさい」と言われたことがあります。私としては今考えているつもりでしたが、代表曰くその時の私は「過去」の参照と未だ来ぬ「未来」の想像の中で考えているのであって、「今」実際にメンバーがいるこの時この空間の中で考えられていないということでした。一瞬頭が真っ白になり、「今」必要な発言や態度とは何かを考えることの難しさを強く感じたのを覚えています。これらの話は、準備は必要ないという意味では決してありません。準備は必要である、しかしそれは「今」考え対応することとは違うということです。どんなに就職活動のための面接のイメージトレーニングをしても実際面接官と対峙した時にイメージと同じシチュエーションになることは稀です。実際に目の前にいる面接官が何を聞いているのか、どういう人材を欲していて自分はどう応えるのかというキャッチボールができなければただ独りよがりになってしまいます。「今」どうするかと向き合う思考と勇気をもって、「今」を積み重ねていきたいと思います。